猫背が引き起こす神経症状


猫背はどこが問題なのか


頚の動作と神経圧迫の関係現代の生活では、多くの人が長い時間椅子に座ってすごします。パソコン作業、自動車の運転、テレビを見る、食事をする、あらゆる場面に背中を丸くして頭をおこした猫背の姿勢があたりまえになりました。猫背はわたしたちの身体にどのような影響をもたらすのか、しっかり理解しておきましょう。
 
 脊椎骨と末梢の神経

「頭痛やめまいと姿勢の関係 」でに紹介したように、わたしたちの背骨の後面は、神経のとおり道(脊髄)になっています。さまざまな器官に分布する神経は、背骨の側面後ろ寄りにある「椎間孔」をとおって脊髄を抜け出し、目的の器官に分布します。椎間孔は、構造上、身体を後ろに反らすと狭くなります。
 
椎間孔圧迫テスト椎間孔を調べる

頚を一方に回旋し少し後ろに倒します。この時、捻った側(縮めた側)の頚に痛みが発生するようなら、あなたの症状と椎間孔の狭まりが関係している可能性があります。この時、上から軽く頭を圧迫して、椎間孔をさらに狭めてみて痛みが強くなるようなら、椎間孔の狭まりがさまざまな症状に関係している可能性が高いといえるでしょう。
 
実際に骨格の動きを見てみても(右上図参照)、首を後にそらした姿勢では、頚椎の後側の突起の間隔がずいぶん狭くなっているのがわかります。このような時、椎間孔で神経が圧迫を受けやすくなります。恒常的にこのような反った状態におかれている関節では、たえず神経が圧迫されて神経の経路にそって痛みやしびれが発生します。このような状態を神経根症と呼びます。
 
 猫背と椎間孔

猫背のように胸椎部が後方に張り出した姿勢は、肩口で背骨が大きく反った形になります。肩口の椎間孔はたえず狭まった状態におかれ、しばしば痛み猫背と頚椎のカーブの関係や筋肉のこわばりを生じます。、猫背になると神経根症の発生頻度はとくに高くなるのです。
 
このような関節の問題を引き起こすのは深層筋です。深層筋は関節の動きや位置を安定させたり制御するための筋肉です。いわゆる身体動作を生み出す筋肉(表層筋)とは働き方に大きな違いがあり、関節が引き伸ばされたり運動しようとすると、関節の安定を図るためにかえって硬く緊張するのが特徴です。ストレッチや牽引をしても素直に伸びてくれないのが深層筋です。

 
 
 


頚椎の神経根症とさまざまな症状


神経根症を理解する
頚の操作と椎間孔の関係首の動作と椎間孔は右図のような関係にあります。横に倒す動作(側屈)、頚を捻る動作(回旋)では、倒した側、捻った側の椎間孔が狭められます。脊柱が右や左に傾いていると右側がきつかったり、左側がきつかったり、左右差が生まれます。
 
一般にストレッチや牽引をおこなうと、先に説明した深層筋の作用で、硬く緊張した関節はなかなか動かず、逆に動きのよい関節が代償して過度に運動してしまう傾向があります。このため症状が改善しないばかりが、問題のなかった関節に過大な負荷をかけ、かえって故障を広げてしまうことがあるのです。
 
さらに圧迫された神経の興奮によって関節部の深層筋が緊張するという悪循環を引き起こします。身体を動かしたり休息をとったり、さらに一般的なストレッチや牽引をほどこしてもなかなか効果が上がりにくいのが神経根症なのです
 
脊柱や骨盤の姿を正しましょう

神経根症による痛みやしびれの症状は、猫背に代表される脊柱の形状に大きく影響されています。脊柱は荷重を分散しようとする生理作用を持っています。離れた部位どうしに思わぬ影響関係をもたらします。「腰が姿勢を理解するうえの基本」で紹介したように、腰部で生ずるカウンターアクティビティの低下がもたらす脊柱の歪みはその代表的なものです。
 
このような痛みやしびれには、問題を起こしている関節に対する正確な調整が必要です。関節の緊張を取り除き椎間孔を開く操作は、けっして難しい技術ではありません。しかし、開くべき部位を一つでも間違えると痛みが取れないばかりか、かえって助長してしまうこともあるのです。指先で運動制限のある関節を探り出し、神経の圧迫が取り除かれるよう、関節ひとつ分を正確にストレッチします。
 
同時に、たえず全身体的な視点にたって、背骨全体のバランス能力の改善を図りましょう。そのためには、股関節や足首などをふくめた幅広い関節の運動制限を解除して行くことが必要なのです。
 
「いろいろ試したけれどもよくならなかった」、「長年、わずらっていてもうあきらめている」という方も、ぜひ一度ご相談ください。手や足の痛みやしびれ、背中や腰の痛みなども、原因となる関節が特定できると身体の状態や症状の経過が理解できるようになります。症状の変化を実感し、前向きにご自分の身体を取り戻していただきたいのです。