姿勢と頭痛やめまいの関連性


頭部の自律神経と姿勢の関係


パソコンをつかったデスクワークは目や手先に負担がかかると同時に、長く続けていると背骨の関節が硬くなって柔軟性がなくなってきます。このため、肩や首、頭部、腕、腰いや背中など、さまざまな部位に身体のこわばりがあらわれてきます。

目の毛様体をコントロールする神経のイメージ 頭部の神経を酷使することによって、頭痛やめまい、動悸や過呼吸などが生じてくることもあります。これらの症状は、病院で検査を受けてもとくに原因がはっきりしないものが少なくありません。姿勢と自律神経の関係を理解して的確に対処してください。

大切なことは、頭部の自律神経に対する理解です。目や耳、鼻など多くの感覚器官は、脳から直接神経を受けています。意外に思われるかもしれませんが、これらの神経系は脳のなかでも中脳や脳幹といった比較的原始的な領域から発しています。頭部に生ずるさまざまな症状は、このような神経系の持つ独特な性質に関係しています。

長時間のパソコン作業では、目で細かな文字やデータを追うために左右の目がたえず同調してレンズの厚みをコントロールし、同時に焦点をあわせなければなりません。このような眼球の運動は、わたしたちの身体のなかでもっともスピードの速い筋肉(速筋)によって無意識におこなわれます。

頭部の自律神経の分布 筋肉が疲労してくると焦点が合いにくくなりますが、無意識におこなわれている運動なので疲れていても止めることができないのが眼球の運動の特徴です。このようにして疲労が加速度的に進むのが目の特徴なのです。

同時に目の運動では、たえず頭部の安定を保つことが不可欠です。脊椎の関節は、おおよそ6~7kgある頭の重みを支えながら、対象との焦点距離を保つために、たえず微妙な位置調整をおこなっています。目が疲れてくると首の筋肉は、いっそう激しく頭の位置を固定しようとします。

目が疲れてくると、首や肩が急に重くなってくるのはそのためです。この際、重要な役割をはたしているのが関節深部の深層筋なのです。

 

 

【症例03】


椅子にすわってパソコンに向かって仕事している。首や肩のこりがひどく、頭痛や眼の疲れを感じている。朝になるとめまいをかんずることがあり、とくに最近、腕にしびれを感じ肩が上がらなくなる日がある。


姿勢のもたらす神経の疲労


 

猫背と頚椎部の関節異常デスクワークは、背中を丸くした作業姿勢が長時間にわたって続きます。このため、猫背の傾向と頚の前傾が進みます。

猫背についても、よく理解しておきましょう。椅子に座っていると、たえず首を前に傾けた状態においています。このため頭部を引き起こすために強い力が必要になります。

肩口の背骨が出っ張ったようになって硬くなっていませんか? ここは頚椎7番、胸椎1番と後頭部を結ぶ項靭帯がくっついているところです。猫背になるとたえず緊張状態におかれ、次第に硬くなってしまうところなのです。

この方の場合、長年のデスクワークにより脊柱全体に猫背の傾向が認められました。そして、肩口の脊柱領域(頚椎7番、胸椎1番)に硬く動かない関節が生じていました。このような方の場合、多くは頚椎が反りすぎになって、なかに痛みを発している関節があります。

反りすぎて痛みのある関節は、「痛もの原因を知って的確に対処」で紹介した神経根症が生じています。

このような関節が首の下側の領域(頚椎4~7番)にあると手に痺れが出てきます。このような関節が首の上側の領域(頭蓋骨・頚椎1~3番)にあると頭痛やめまい、眼精疲労、顎関節症、不眠、動悸や過呼吸などが起きてきます。
頚髄神経の分布経路
頭部の症状に対しては、関節機能の改善と同時、脳神経系の緊張を鎮静することがとても大切です。頚椎部をボキボキ調整されてあとになって頭痛がひどくなったり、めまいがするという方がいらっしゃいます。これは結果的に脳神経系を興奮させてしまったときに起こる反応です。

この方は、一回目の施術で、頭痛などの症状がとれ、数日間は手のしびれがありませんでした。2、3度と回数を重ねるごとに手のしびれが起きなくなり、腰の痛みや肩こりがすっかりなくなりました。