急性の腰痛について


激しい腰痛の原因


ぎっくり腰になるとわずかに身体を動かすだけで、激しい痛みが生じます。この痛みは、たんなる筋肉の張や疲労では説明のつかない激しいものです。
 
ぎっくり腰の痛みを理解するためには、身体の重みがいかに巨大なものであるか、また、わたしたちが、なぜほとんど意識もせずに軽々と身体を操ることができのか、この二点についての理解が不可欠です。
 
たえず腰痛に悩まされている人は、ご自分の身体を支えている仕組みを理解して、前向きに症状の克服に取り組んでいただきたいと思っています。
 
身体の重みが腰にもたらす負担体重50Kgの人の腰には30kg近い上半身の重みがかかっていることになります。この重みは、水を詰めたポリタンク二つ分に近い重さです。仮にその半分の重みであったとしても、静かに指先などにのせれば激しい痛みを生じさせるに十分な重みです。
 
もし、上半身がバランスを取るような左右にゆれたり、中腰などのポーズをとれば、骨を砕くほどの力が発生します。わたしたちの身体動作は、長い進化の結果生み出された高度な仕組みによって、この高度な運動をいともたやすくおこなえるように作られているのです。
 
関節に分布する神経系 しかし、この巨大な身体の重みが、大きな脅威であることに変わりありません。「腰痛発生の生体力学」で紹介したように、お辞儀の動作(中腰の姿勢)では腰の関節部に200kg近い力がかかります。
 
関節内に張り巡らされた多くの神経が関節内部の圧力をうまく調節してくれなければ、即座に激しい痛みが発生してもおかしくないのです。

 


関節機能を高めよう


ぎっくり腰と腰椎の変位実際、わたしたちの関節には、ときとして異常が起こります。長時間同じポーズをとっていると深層筋の作用で関節が硬くなってしまうのです。関節の歪みが一定のレベルと超えると、関節内の圧力を緊密に保つことができなくなります。
 
虫歯の痛みを想像していただくとわかるように、刺激にさらされた神経は過敏になって、ちょっとした圧力や接触によって激しい痛みを引き起こします。ぎっくり腰の痛みは、関節に張り巡らされた神経系がこのようにして激しい痛みを引き起こすために生じたものです。
 
原因となる関節は骨間の動きが低下して硬くなっています。そして、骨に触れるだけでいやな痛みが生じます。多くの場合、このような部位は腰椎が後方に張り出し、左右いずれかの運動に著しい制限があります。中腰の姿勢で激しい痛みや、腰の力が抜けたような不安感に襲われる傾向があります。
 
ぎっくり腰の痛みは、このような関節の運動制限を取り除かないと取り除かれません。筋肉の張りやコリをゆるめること自体では効果が上がらないのです。
 
症状の経過を見ると、あたかも突然このような関節の位置異常が生ずるように感ぜられるかもしれませんが、じつは、その下地にはかなり長い経過があります。
 
ぎっくり腰を発する方は、問題箇所を含めて、周囲に痛みの発しない程度の関節の運動制限がいくつもあります。そのなかで、中腰の姿勢などをとり続けることのよって問題となる関節異常が発生するのです。
 
膝を立てて寝ることの効用 瞬時に痛みが発生するので、突発的な出来事のように思われますが、その下地に慢性的な腰部の関節運動の乱れがあります。このような条件を改善しないと、たびたびぎっくり腰を繰り返すようになります。
 
身動きが取れないほどの痛みに襲われたら、当初は、病院で鎮痛薬を処方していただいて、身体を横にしてしっかり関節を休めることも必要です。
 
わたしたちの身体の重みはとても巨大です。身体を横にするだけでも、関節の機能を解放する大きな意味があることを知ってください。3日~1週間くらい、関節を休ませた後、関節の運動の制限を取り除いてゆくとよいでしょう。