反ると痛む腰痛について(神経根症)


反ると痛むのはなぜ?


腰椎のすべりによる神経根症
同じ腰痛でも、たんに筋肉の緊張で腰が痛いのと関節の変位よって引き起こされる腰痛では、痛みの特性も対処法もまるで異なります。まず、骨格の変位が腰痛を引き起こすメカニズムについて理解しましょう。
 
骨格の変位が腰痛を引き起こすには、大きく分けて二つの異なるタイプがあります。そのひとつは、下側の腰椎が前方にすべることによって、神経の出口(神経根)に圧迫が生じて痛むもので、身体を反らしたときに痛みが強くなりやすいのが特徴です。朝起きたときに腰が痛い、あるいは足の裏が痛いなどといった症状も、ほとんどはこのタイプに属します。
 
腰椎4~5番が反った状態に固定されて発生します(前方変位)。「プロの目から見た猫背の問題点」で紹介したstaage03の原因となるのもこのタイプの腰痛です。
 
もうひとつは、身体を前に倒す瞬間に痛みが発したり、腰の力が抜けてしまうタイプの腰痛で、このタイプがもっとも激しくあらわられたのがいわゆるぎっくり腰です。歯磨きなどをするときに何かものにつかまらないと怖い、長く座ったあとに腰が痛くて動かせないといったのは、このタイプです。
 
腰椎の関節の不整合が原因で、通常、腰椎2~4番のいずれかが後方に張り出すように変位し硬くなっています。いずれの腰痛も、できるだけはやく腰椎の変位(運動制限)を取り除くことが必要です。ここでは、腰椎4~5番に多発する前方変位に伴う腰痛について、対処法をふまえて詳しく紹介します。


腰椎4~5番、前方変位の鑑別法


【力なく沈んだ腰椎】
「頭痛やめまいと姿勢の関係」のところでも紹介しましたように、わたくしたちの脊柱は後ろ側が狭まる動作で神経の圧迫を生じます。腰椎4~5番に多発する前方変位に伴う腰痛とは、腰椎4~5番の後ろ側が狭まった状態で発生して神経根症による腰痛です。慢性的に腰痛に悩む人のほぼ95%の人がこのような問題を抱えています。
 
うつ伏せで観察してみますと、同じ脊椎骨のなかに力なく沈み込んだ椎骨(前方変位)があります。このような椎骨は胸椎部であっても腰椎部であっても、圧迫するとイヤ~な痛みを伴います。
 
腰椎のすべりによる腰痛の鑑別法 【鑑別法】
椎骨の前方変位にともなう痛みは、仰向けやうつ伏せなど、腰椎部に反りが生ずる姿勢になると痛みが発します。短時間なら大丈夫でも長時間寝ていると腰が痛くなるといったのも、同じ理由です。とくにうつぶせ寝で前方変位した腰椎を圧迫するといやな痛みがあります。
 
腰椎のすべりの解除法 逆に、お腹の下にクッションなどを入れて背骨を丸くし、椎間孔を開くような姿勢を取るとスっと痛みがらくになくなります。このタイプの腰痛を鑑別する大きな指標です。
 
日常生活でたえまなく痛みや不安感におそわれていても、椎骨の後方をひらかせるとスっと痛みがらくになり不安感が消えてしまうとすれば、腰の痛みが椎骨の前方変位によるものだと判断して間違いないでしょう。
 
逆にこのような椎骨の変位ヘの配慮なしに、腰部の緊張をとる・腹筋をつける・体重を減らすといった一般的な腰痛対処法をとってもなかなか効果がありません。的確な理解に立って、椎間の状態に配慮した自己コントロールと調整をおこなって下さい。
 
【自己コントロールを始める前に】
問題が生ずるのは多くは腰椎5番で、ついで腰椎4番の順です。運動などによる故障や妊娠などによる腰部の前弯が強い場合、より上位の椎骨で発生することもあります。通常に仰向けに寝ると腰椎部の反りが強調されて痛みを生じますが、仙骨の下に枕をいれ腰を丸くさせ腰椎の後ろ側が開くようにしてみて下さい(お腹の力を抜いて脱力します)。腰の不安感がスっと消えるはずです。
 
枕の位置は問題を起こしている椎骨の場所によって多少異なりますが、おおむね骨盤部を高くして腰椎が丸くなるようにしていただくとよいでしょう。痛みが発生する椎骨の位置をしっかりと突き止め、問題の椎間孔が確実に広がるようにすれば、より効果的です。
 
腰椎のすべりの鑑別法の考え方 【痛みの原因をしっかり理解しよう】
痛みの原因をよく理解しましょう。この腰痛は、椎骨の前方変位が起こると突然発生します。このため、いろいろ運動などを試しながら、無力感に襲われている方も少なくありません。
 
腰椎は脊椎骨のなかでも強い荷重を受ける部位です。荷重を受け止める椎体部分は大きく切った沢庵くらいの大きさです。五つある腰椎のなかでも、とくに腰椎5番と仙骨との関節(腰仙関節)は、関節面が前方へ30℃以上も前に傾いています。
 
椎骨のズレを防止する靱帯(コラーゲンの繊維で出来ている)は椎体の前側をびっしりと覆っていますが、このコラーゲン繊維は運動などによる刺激がないと新陳代謝されません。
 
このためには、足裏の内側に荷重し、腰椎の前側にしっかりと張力のかかる歩行習慣を身に着けることがよいのですが、多くの人は、加齢に伴って外側荷重・踵(かかと)荷重の傾向が強くなり、骨盤をしっかりと使った歩行動作ができなくなってしまうのです。