腕や肘のしびれるとき(胸郭出口症候群)


胸郭出口症候群


胸郭出口症候群の検査法胸郭出口症候群は、鎖骨と胸郭の間で、腕に向かう神経や血管が圧迫されて痛みが出ます。前のページで紹介した前斜角筋、中斜角筋は胸郭を引き上げる作用が強く、斜角筋症候群と深く関連しています。腕に向かう神経系と斜角筋や肩甲骨の動きをコントロールする神経は基本的に一緒です。一度緊張が起こると、圧迫がさらなる緊張をまねく悪循環を招きやすい弱点を持っています。これには、日ごろの腕の使い方が大きく関係しています。
 
太古の昔、人類の祖先が森で木登りをして生活していた頃には、手と肩の筋肉の連携性を高める便利な仕組みだったはずです。木登りをしなくなった現代人は、ほとんどの時間、二本の腕をぶら下げて使います。このことが腕と肩の仕組みを痛みの悪循環の原因にしてしまっているのです。
 
逆の見方をすれば、わたしたちの肩は、いまだに木登りの習性を引き継いでいるともいえます。つまり、ぶら下がるような動き、ものを引きおろすような動きに適しているのです。このことを利用して、腕や肩の緊張を取り除くこともできます。
 
たとえば木登りや岩登り(フリークライミング)、鉄棒の伝い渡り、水泳のクロールなどはいずれもものを引きおろすような筋肉のクロールと肩の筋肉の緊張使い方をします。日ごろ、長時間にわたって腕を引き上げるために使われれている肩の筋肉を、逆方向の運動で休ませてあげるのはとてもよいことです。腕や肩の筋肉を、本来の役割に目覚めさせてあげる意味があるのです。

 


頚椎の神経根症


頚椎の神経根症は、「猫背が引き起こす神経症状」で紹介した姿勢の問題とストレートに結びついています。
頚椎の前彎と神経根症
他のページでも紹介してきたように神経根症は、そりすぎの椎骨の下側で神経が圧迫されて生じます。
 
右図のように、立った姿勢で頚椎の後方の突起(棘突起)をさすり下げてみましょう。目で見ているだけでは気づきませんが、指先で触ってみると、同じ頚のなかに大きなでこぼこがあるのが分かるはずです。
 
神経根症を起こすのは、このくぼんだ頚椎です。くぼんだ突起を後から軽く圧すると痛みを発するはずです(強く押してはいけません)。そして、首をそらす動作をして痛みを感じることが多いはずです。
 
猫背は背中を丸くした姿勢ですが、このとき、頚椎部にはかならず強い反りが生じます。頚椎の神経根症は、この強い反りによって発生します。猫背が強くなれば強くなるほどい、頚椎の神経根症はきつくなります。強い痛みや神経症状があらわれやすくなります。
 
長時間のデスクワークでは、猫背と頚椎部の強い反りが長時間にわたって継続します。仕事に集中していると、身体の張りや疲労がなかなか意識に上ってこないため、身体にかかる負担はいっそう大きくなります。
 
気がついてみると、肩や首がコチコチに固まっていたというときは、よく注意しなければなりません。実際に症状が表れてきたときは、すでに相当な疲労の積み重ねがあることを理解しておきましょう。
 
首をよくストレッチしたり牽引しようとされは方はよく注意していただきたい点があります。
 
背骨の関節は、ある場所が前傾すると他の場所が後傾し、ある場所が左に傾くと別の場所が右に傾くといった連動性を持っています。どこかに動きが悪い部位があると、かならず隣り合わせて動きすぎの部位があります。このような関節の相関性を、背骨の運動リズムと呼んでいます。
 
素直にストレッチをしたり牽引をすると、動くのはふつうは動きやすい部分だけです。また一方向に強く引き伸ばすと、かならず変位が助長されてしまう関節が出てきます。せっかくストレッチをしたのに、かえってだるさが意識されたり痛みが強くなったというのは、このような場合です。痛みが出ている場合には、とくに注意をして極端な牽引やストレッチは避けるようにしましょう。
 
大切なことは、首全体を引き伸ばすのではなく、動きに制限のある関節を的確にストレッチすることなのです。そのためには、関節を固定する深層筋の緊張をしっかり取り除きましょう。