細胞の視点で健康を考える


細胞の視点で身体を捉える


image_cell001わたしたちの身体は、細胞の活動によって支えられています。細胞の活動には、生命活動の姿が凝縮されています。自律神経の役割を理解するうえで、このことを理解しておくことが大切です。

人間の体内にはさまざまな対応の細胞があります。神経の細胞、消化管の細胞、筋肉の細胞など、さまざまな形に分化していますが、もとは受精卵から生まれたものです。つまり細胞の持っている基本的な性質は共通です。

細胞のレベルで見ると、人間も動物も、より原始的な生き物ですら、外見上は大きな違いはありません。細胞のもつ基本的な性質について知ることが、「生きる」こと、健康を保つことの基本なのです。


なぜ多くの内臓が必要なのか


ほとんどの生き物は、形こそちがえ呼吸の能力、消化吸収の能力、タンパク質を合成する能力、アンモニアを排泄する能力、血液を循環させる能力、生殖の能力を持っています。昆虫やイカ、ナマコ、ウニ、トカゲやカエルにいたるまで、動物といわれる生き物はみなそのための専門の器官を備えています。

これは、酸素を取り込むこと、炭水化物を取り込むこと、たんぱく質を合成すること、アンモニアを排泄することが、細胞の基本的な生理活動だからです。

肺、顎、胃や腸、肝臓、腎臓、心臓、精巣と卵巣などの器官は、このような目的のために専門化した細胞の集まりで、多細胞生物であれば、形こそちがすべての生き物に備わっている能力です。

器官の分業体制


大切なバランスと時間的同調


さまざまな内臓の働きは、体内の細胞の生理活動を支えるためにあります。そのために専門化して、効率的に外界から物を取り込み、排泄する役割を担っているのです。

体内の血液循環は、このような分業体制を結び付け、細胞にとって好ましい生活環境を守るために不可欠な作業です。単に循環していればよいというのではなく、必要な物質を供給し、有害な物質を取り除くことができる形で循環していることが大切なのです。

腹部動脈模式図

したがって、これらの器官の働きは量的なバランスと時間的な同調性を保っていることが必要です。たとえば2500Kcalを消費するためには、これらの器官の働きが一定の割合でバランスしていなければなりません。しかもそのタイミングが一致していなければならないのです。

それぞれの器官の働きがバランスしていれば、呼吸が苦しくなったり、動悸がしたり、太ったり痩せたり、疲労感や倦怠感などに襲われることがなくなるのです。


内臓の働きは細胞シートと運動能力による


内臓の働きは、それぞれの内臓を構成する上皮性細胞の面積によって生み出されます。肝臓、肺、腸、腎臓などの器官は、それぞれの内部にテニスコート一面分ともいわれる上皮性細胞の巨大なシートを内蔵しています。

これら広大な上皮性細胞のシートの面積を余すことなく使うことが、内臓の機能を十分に発揮するために必要なのです。

たとえば肺のなかにテニスコート一面分の細胞のシートを押し込んだとしましょう。このシートのすみずみにまでしっかりと空気と血液が循環するようにするためにはそこに十分な運動の能力がなければなりません。

おなじことが、腸、腎臓、肝臓、脾臓などの器官にも当てはまります。肺や腸は自分自身で運動する能力を持っていますが、腎臓や肝臓、脾臓は血液の循環がこの役割をはたしています。

そのためのバランスを保っているのが自律神経系なのです。


自律神経系の役割と働き


自律神経系は、血管の太さ、内臓の筋肉や腺の細胞の能力をコントロールしています。それによって、いま述べた体内器官の活動の量的なバランスと時間的同調をはかり、体内の細胞の生活環境を保つ働きをしているのです。

血液の循環03a

自律神経の異常は器官の働きの異常、バランスの乱れのサインです。実際に大きな疾患に陥る前に、このようなサインを見つけ、身体を整えることが健康の維持増進、予防の観点から重要なのです。

当院の行っている手技療法の施術は、そのような意義を持っています。


具体的な異常のサイン


腹壁にあらわれるさまざまな表情は、わたしたちの心身の状態を如実に反映しています。漢方では、胸脇苦満といえば肝の証で、肝臓のある右季肋部が硬く強ばりを感じ、門脈のうっ帯から陰部の乾燥や痔瘻、便秘や下痢、また迷走神経にそった頚部の緊張などを伴うものですが、そのほかにも多くのことを教えてくれます。

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上腹部には胃があります。胃の表面は、通常は、軟式テニスポール表面のような、柔らかな薄い膜のように感じられます。しかし、夏など冷たいものをお腹に入れるとすぐにごわごわした硬いしわのようなものがあらわれてきます。

寒さが厳しい冬には胃の表面が硬くなっている方が多く、苦しくて仕事を休むという方もいらっしゃいます。冷えによる反応が表れやすいのも上腹部の特徴なのです。

そういったこととは関わりなく上腹部がごわごわと硬いたちの方もいらっしゃいます。これは神経の細やかな人の特徴で、人が一考えるところを、たえず十考えてしまうような繊細な方の場合です。 一見豪放磊落に見えるようでも、じつは神経質に細やかな心配りを欠かさない、止めることができないといった方の場合、胃壁を見るとスジ状の強ばりがあらわれています。他の何よりも頭脳系を鎮静するような調整が求められます。

胃から下ったところにあるのが十二指腸です。十二指腸は通常、大腸の横行結腸(ガスなどでしばしば移動します)の下にあり、腹壁から見るとかなり奥の方になります。

十二指腸はタンパク質や脂質の消化をおこなう場所ですが、とくに胆汁や膵液によって胃酸を中和し、消化管を胃液の酸から守ることが重要な役割です。 十二指腸に生ずる強ばりや違和感は、ほとんどの場合、胃酸による荒れや炎症でだと考えられます。酸が十分に中和されないと胃の出口(幽門)は口を閉ざして開かなくなります。このような時、食道からの入り口(噴門)が開いてしまうという反射があって、胸焼けを生ずることも少なくありません。

脂っこいものが胃にもたれたとか、食べたものが胃につかえて降りていかないなどといった症状があらわれてきます。 このような時は、背部の筋肉の盛り上がりを叩くとお腹の方に響きを感じやすく、肘が冷えたり、膝の裏が痛かったり、とくに油っこいものに弱い方の場合、右半身にさまざまな表情(頭痛・肩痛・腰痛・股関節痛など)があらわれてくる傾向があります。

関連する神経系、とくに上腰部(腰椎2番部)と下肢にそってツーッとするような興奮があらわれますから、これを鎮静しなければなりません。

大腸のあたりは、インフルエンザ・風邪などの感染症で硬くなってくる傾向があります。これらの感染による発熱が腸熱であることを示しているのかも知れません。

下腹部の緊張で多いのは、過敏性大腸とって仕事やストレスなど、外的な事象に影響されて便秘や下痢を引き起こしやすいタイプです。腸腰筋の緊張では、硬さはあっても放散痛のような響きがありませんから、区別しなければなりません。


脊髄神経反射のテクニック


このような内臓のサインを捉える上で重要なのが、脊髄神経反射のテクニックです。そもそもはエイブラハムという医師がアメリカの開拓時代に提唱したスポンディロセラピーという療法でした。

この療法は大正時代に医師・児玉林平によって日本に紹介され、戦後の療術科学化運動のなかで、療術師・亀井進によって『類別克服法』として大成され膨大な体系として世に問われます。

当院の施術は、この類別克服法の観点にたって、姿勢の改善などの観点と合わせて提供させていただきているものです。