目の疲労が加速度的に進むわけ


人類の目の高度な機能


目が光をとらえる仕組み目の疲れが継続的にあって、改善されにくくなった状態を眼精疲労と呼んでいます。神経の作用からくる神経性のもの、筋肉の作用からくる筋性のもの、焦点を調節する能力の低下などによる調節性のもの、ドライアイや緑内障などからくる症候性のものなどに分類されます。
 
パソコンの普及によって、目の疲れを訴える方はとても増加しています。一般に、わたしたちの身体は、自律神経が不安定になると、代謝が低下する、血流が停滞し腫れや冷えが生じる、汗腺の活動性が低下して皮膚がカサつく、筋肉が思うように動かせなかったり痛みを発するといったことが生じてきます。
 
目の疲れや眼精疲労の場合も、このことを念頭において考えておくとよいでしょう。目の働きは、人間の器官のなかでももっとも高度で複雑です。かのチャールズ・ダーウィンも、「さまざまな距離に焦点を合わせ、さまざまな量の光を受容し、光の球面収差や色収差を補正するといった比類なき機能をそなえた目が、自然選択によってつくられたのだろうと考えるのは、率直にいって、このうえなくばかげていると思える。」と述べているくらいです。目の症状や目の休養のとり方を理解するために、目の働きについてよく理解しておくとよいでしょう。
 
わたしたち人類は、空間を「立体的に見る」ことができるすぐれた視覚を持っています。人類を含む霊長類は、森林で木と木の間を行き来して暮らしてきた歴史を持ち、このために、高度な空間認識能力が発達させました。二つの目は、たえず同じ対象に焦点をあわせて、ものを立体的に見ようとします。このため、休むことなく細かな運動するようにできています。
 
目が焦点をあわせる働きは、デジタルカメラと同じです。対象の輪郭線がくっきりするようにレンズの厚みをコントロールするのです(デジタルカメラは人間の目の機能をまねて作られています)。レンズの厚みをコントロールしているのは、毛様体と呼ばれる筋肉です。毛様体は対象物の輪郭線がくっきりと認識できるように筋肉運動を行い続ける性質を持っているのです。


目が疲労するとはどういうことか


眼球運動をコントロールする筋肉群目の活動に関係する筋肉運動は、それだけではありません。二つの目を繊細にコントロールするためには、頭の位置を安定させるための筋肉運動も重要な意味をもっています。
 
このためにとりわけ大きな役割をはたすのが、後頭部と頚椎1番(環椎)・2番(軸椎)を結び付ける筋肉郡です。目や後頭部でおこなわれるこれらの細やかな作業は通常、意識に上ることがありません。意識的に休ませることができないことが、しばしば目の疲れをきついものにしています。
 
どんなに疲れていても、視野にものが飛び込んできると、わたしたちの目はかならず焦点をあわせようと運動します。疲れてくると目の焦点があわせにくくなってきますが、このようなときに、目はいっそう激しく運動しようと懸命になるのです。
 
目が疲れてくると、これらの筋肉の部位に大きな疲労感や重さ、疼きのようなものが生じてきます。眼球や頭の安定を図るための運動は、無意識化されているため、どんなに疲れていてもとめることができません。視界にものが飛び込んでくるたびに強い疲労感を感じてしまうは、このような事情によるです。
 
とくに薄暗いところで鉛筆の文字を読むような、輪郭線のはっきりしない対象を見ようとすると、目の疲労感はいっそう短時間に進みます。また、目にとまりやすいよう訴求力を高めたロゴマークや広告の文字などは、目そのものよりも大脳の識別力を喚起して目の焦点化を促す作用を持っているため、広告の文字とか雑誌の紙面、webページのデザインなどを見ると、目の動きがより強く動員されて疲れやすいという面もあります。
 
目を休めるためには、ハードウェアとしての目の機能と、その指令役となる大脳の機能の両方に配慮する必要があるのです。目を休めるために、遠くの空や山をぼんやり眺めるとよいという進めには、このような二重の意味があるです。