頭痛のメカニズムと対処法01


頭痛の成り立


 鰓弓器官の形成について目や耳、鼻など多くの感覚器官が集まる頭部周辺は、身体構造上、特別な性質を持っています。とくに発生学では頭を中心とした領域を「鰓部(えらぶ)」と呼んでいます。これは、魚の鰓(えら)から進化したという意味で、わたしたちの頭部の器官には、そもそも鰓になるべき器官が変化しながら形作られた痕跡が多く残されているのです。

頭部の器官は、脳から直接分岐した神経系(脳神経)の支配を受けます。脳神経系は副交感神経性の性質を持っていて、夜間に活動が活発化しやすいかったり、運動機能と自律神経機能が混在しているなどの特徴を持っています。

たとえば夜寝ると、心臓や肺の働きは抑えられます。頭が低い位置に下がるので、日中のように高い血圧は必要ありませんし、多くの酸素を取り込む必要もありません。このような血圧や呼吸などの自律神経機能のコントロールは脳神経系(迷走神経と呼ばれます)のもっとも大きな作用の1つです。

これとは別に、夜寝るとわたしたちの頭部の筋肉は、歯軋りをしたり、口をパクパク動かしたり、左右に眼球を動かすなどの不随意の運動をおこします。このような運動をコンロトールしているのも脳神経系(三叉神経や外転神経など)です。

血圧や呼吸などの自律神経機能と歯軋りやチック症などの運動コントロールを同じ神経がおこなっているのは不便ではないかと思われるかもしれません。じつは、これこそが自律神経機能と運動機能が混在している脳神経系の特徴なのです。

実際に、自律神経の緊張が強くなると運動機能に影響があらわれ、歯を強く噛みしめみしまったり、頬の筋肉が意思によらすにぴくぴく動いたりします(三叉神経や顔面神経など)。これは、頭部の器官が鰓(えら)から引き継いだ原始的な性質なのです。

顎関節症・チック症・眼精疲労・めまいなど、頭部周辺の症候に対処するにはこのことを考慮した調整が必要です。

その代表的なものの一つが頭痛です。ここで説明しているのは、病院などの検査で深刻な脳神経障害や血管障害などの問題が見られない、一般的な頭痛ですから誤解のないようにしてください。実際に頭痛を抱えて病院を受診されて、特別な疾患によるものではなくいとの診断をいただいた頭痛は、頭部の神経系の働きの乱れによる『不定愁訴』です。


二種類の頭痛を区別する


このような頭痛にたえず悩まされているという肩は、まず痛みが拍動性に「ドクン、ドクン」と感じられるのか、あるいは締め付けられるように持続するのかを見分けましょう。また後頭部の重さとして感じられる頭重は、多くの場合は上部の頚椎で後頭神経が圧迫されて生ずる神経根症で、これら二つとは区別して考える必要があります。順を追って説明してみましょう。頭痛に関係する頚部の血管の走行

拍動する頭痛の場合


血管の拍動に同調したする「ドクン、ドクン」する頭痛は、動脈に分布する自律神経系と関係しています。

頭部にいたる動脈は、基本的に椎骨動脈と総頸動脈の2系統あります。総頸動脈は、頚椎4番の高さでふた手に分かれますので、総計で3系統の血管が脳に向かって流れています。

とくに椎骨動脈は頚椎の横突起の穴のなかを数珠をつないだように貫いて頭部にいたるため、頚椎の変位や筋肉の緊張に強く影響を受けます。

椎骨動脈が急激にカーブする頚椎1・2番周辺の変位はとりわけ拍動性の頭痛に大きく関わります。脳神経の特性から、自律神経の緊張が筋肉に反射して背骨の関節に位置の異常を起こしやすい部位です。

 神経根症による頭重


上部頚椎の神経根症の検査法左図の動作(左図)で鈍痛や動作の制限が見られる場合は、神経根症を起こしている疑いがあります。

後頭部を指で探るとぐりぐりした骨のかたまり(頚椎2番の棘突起)があって、それが左右一方にかたよった位置におかれているのが特徴です。

長時間、パソコンのディスプレイを眺めていて、次第に後頭部が重くなって首のおきばがなくなる、頭が重くて寝ても寝た気がしない、目の疲労から後頭部が痛くなった、などの場合がこれに該当します。

このときは、周囲に分布する筋肉をゆるめ脳神経系の緊張をよく鎮静することが必要です。そして、とくに上部の頚椎と頭蓋骨との関節をよくゆるめ、背骨がゆるゆるっと動きやすい状態にします。こすれば神経の圧迫が取り除かれ、頭の重みがすっと消えてゆきます。

神経根症は、関節の固着が神経を圧迫し、さらに関節を硬く固定してしまうという、悪循環です。ある意味では、こむら返りの痛みと似たところがあります。しっかりとゆるめきるまで持ってゆかないと、何かの拍子にすぐに頭重感がぶり返しやすいのが特徴です。

このような緊張は、身体が疲れるとすぐに頭痛が発生してくるいわゆる頭痛体質をつくります。この領域は、頚椎の関節部や前側に至るまで細かな筋肉が分布しています。実際に緊張している筋肉を的確にストレッチし、上部の頚椎を快適な状態に保つようにするとよいでしょう。